移植後 3 ヶ月で腎機能低下を認め ワーファリンによる薬剤性腎障害が疑われた 1 例
【症例】61 歳男性
【現病歴】 X 年 2 月血液型不一致夫婦間腎移植施行。血管デザインに難渋し腎静脈が腸腰筋と総腸骨動脈の間に挟まれる状態となったが、
血流障害は軽度でありワーファリン開始のうえ移植 29 日後に退院した。
退院時 Cre 1.7 mg/dl であったが緩徐な腎機能悪化を認め、移植 67 日後に Cre 2.2 mg/dl まで上昇し精査加療目的に入院した。
超音波では腎静脈狭窄の増悪や血栓形成は認めず血流障害は否定的であった。
一方で移植 76 日後に施行した腎生検では尿細管上皮細胞の空胞変性を広範に認め薬剤性腎障害が第一に考えられた。
また軽微な間質炎症細胞浸潤・傍尿細管毛細血管炎・静脈内膜炎も認め Border line change が示唆された。
薬剤性腎障害の被疑薬として疑われた TAC はトラフ 6-8ng/ml から 3-4ng/ml に減量のうえ、PSL・ MMF を増量した。
さらに既に内服終了したバラガンシクロビルのほか、ARB や ST 合剤も疑わしく使用を中止した。
しかし入院中最高 Cre 3.1 mg/dl に達したのち、薬剤調整を行うも Cre 2.4mg/dl までしか改善は得られず、移植 98 日後に退院した。
ところが後にワーファリンが DLST 高値と判明しエドキサバンに変更したところ、移植半年後に Cre 1.6 mg/dl まで改善し以後増悪なく経過している。
【結論】 本症例はいわゆるワーファリン腎症(PT INR 3 以上の過剰な抗凝固状態での糸球体出血・尿細管閉塞) ではなく、
DLST 高値であったことからワーファリンに対するアレルギー機序の関与が示唆された。
その他ワーファリンによる直接的な尿細管障害や石灰化の関与も示唆されており、ワーファリンによる腎障害に関しては機序不明な部分も多く、
本症例について文献的考察も踏まえて報告する。